死後事務委任契約・尊厳死宣言書
老後・死後への備えとして重要なのが、「財産管理委任契約」「任意後見契約」「死後事務委任契約」「尊厳死宣言書」です。
ここでは、「死後事務委任契約」と「尊厳死宣言書」について説明します。
死後事務委任契約
死後事務委任契約とは?
人が亡くなると、葬儀や遺品整理、役所への届出などさまざまな手続が必要になります。このような死後事務を委任する契約が「死後事務委任契約」です。財産管理委任契約や任意後見契約は原則として本人の死亡によって終了しますし、これらの事項は遺言で定めることもできませんので、別に死後事務委任契約を締結しておく必要があるのです。
死後事務委任契約書の作成方法
死後事務委任契約書はどのような形式で作成してもかまいませんが、自分の意思で作成したことを明らかにするために公正証書で作成すると良いでしょう。財産管理委任契約や任意後見契約とともに作成することをお勧めします。
死後事務委任契約の注意点
葬儀や遺品整理には相応の費用が必要となりますが、財産管理委任契約も任意後見契約も終了しているので、故人名義の現金預金から費用を払うことができません。あらかじめ費用相当額を受任者に寄託するなど費用の手当をしておく必要があります。
本来、葬儀は喪主が主催するものであり、遺品は相続財産を構成する財産です。相続人の意向に反する内容ではトラブルになるおそれがあるので、あらかじめ親族の了解を得ておくことが望ましいと言えます。
葬儀や遺品整理などは、生前契約サービスを行っている業者もあるので、信用できる業者のサービスを利用するのも一つの方法と言えます。
尊厳死宣言書
尊厳死宣言書とは?
日本尊厳死協会によると、尊厳死とは「傷病により『不治かつ末期』になったときに、自分の意思で、死にゆく過程を引き延ばすだけに過ぎない延命措置をやめてもらい、人間としての尊厳を保ちながら死を迎えることです。」とされています。延命治療に対する考えは人それぞれです。しかし、尊厳死を希望していても、実際に延命治療を受ける場面で意思表明できないかもしれません。尊厳死を希望するのであれば、「尊厳死宣言書」であらかじめ自分の意思を表明しておくと良いでしょう。
尊厳死宣言書の作成方法
尊厳死宣言書はどのような形式で作成してもかまいません。自分の意思で作成したことを明らかにするために、公証人の認証を受けたり、公正証書で作成するのも一つの方法でしょう。
尊厳死宣言書の注意点
自分がどのように死を迎えるかは、自分だけでなく家族の問題でもあります。自分が尊厳死を希望していても、実際に治療を受ける際に家族が延命治療を希望すれば、医師も家族の希望を無視できません。家族とよく話し合い、理解してもらうことが必要です。
また、延命治療を開始する前に宣言書を医療機関に提示するべきでしょう。いったん延命治療を開始してしまえば、中止することは難しいからです。
尊厳死宣言書には法的な効力があるわけではありません。尊厳死宣言書があっても、医師が延命治療できないわけではないので、注意が必要です。